旅する曲げわっぱ「駅弁と言えばまずこれ!」横浜崎陽軒のシウマイ弁当
7月16日は駅弁記念日。
駅弁の歴史を紐解くと、明治18年に栃木県宇都宮駅で販売された「汽車辨當(べんとう)」という握り飯2個とたくあんを竹の皮につつんだ弁当がはじまりと言われている。いまでは日本各地でその土地ならではの駅弁が販売されて、いまでは2,000種類以上あるとも。
そんな各地の駅弁を手作りして曲げわっぱに詰めてみたら、その土地に電車旅に行った気持ちになるかな?という思いを馳せて「旅する曲げわっぱ」を始めてみました。
第一回は日本一売れている駅弁といえばあまりにも有名な神奈川県横浜駅のシウマイ弁当。崎陽軒の赤い箱のシュウマイは誰もが食べたことがあるなつかしの味ですね。
崎陽軒のシウマイ弁当
1954年(昭和29年)、「横浜ならではの駅弁をつくりたい」という思いから、シウマイの妹分として登場。
崎陽軒の“冷めてもおいしい”へのこだわりが詰まったこのお弁当は、発売以来多くの方に親しまれ、近年はその食べ方の流儀も話題になっています。
引用:崎陽軒公式ページ
それでは、駅弁の旅にGO!GO!トレイン!
さっそく作ってみました!
材料
お弁当の中身は以下のとおり、さすが充実しています。
・シウマイ
・厚焼きたまご
・鮪の漬け焼(メカジキで代用)
・かまぼこ
・鶏の唐揚げ
・筍煮(市販のもの)
・杏の甘煮(干しあんず)
・切り昆布(市販のもの)
・千切り生姜
・俵型ごはん
・青小梅
レシピ
まずは主役の
『シウマイ』から
・豚ひき肉 250g
・玉ねぎ 大1/2
・ホタテの缶詰 汁ごと1缶
・調味料
オイスターソース 大さじ1
砂糖 大さじ1
醤油 大さじ1
酒 大さじ1
鶏がらスープの素 小さじ1強
すりおろし生姜 小さじ1
・ごま油 小さじ2
・片栗粉 大さじ1
・グリンピース
・焼売の皮 30枚
1. 玉ねぎをみじん切りにし、ボウルに入れ片栗粉をまぶしておく。
2. さらに豚ひき肉、ホタテの缶詰(汁ごと)、調味料を入れてよく混ぜる。最後にごま油を混ぜ合わせる。
3. 焼売の皮に具をのせて包む。
4. グリンピースを乗せる。少し押し入れる感じで。
5. 10分ほど蒸して、完成。
次にお弁当の名脇役
『厚焼きたまご』
・卵 3個
・砂糖 大さじ1と1/2
・醤油 小さじ1
・サラダ油 適量
1. ボウルに卵と調味料を入れて混ぜる。
2. よく熱した卵焼き用のフライパンにサラダ油をひき、フライパンに卵液を1/4ほど流し込み、大きく混ぜる。
3. 片方に寄せて、形を整えてひっくり返す。
4. 残りの卵液も同じように流し込み、焼いていく。
『鮪の漬け焼』
近所の魚屋さんにマグロを買いに行くと、お店のおばさんが「こっちのほうが美味しいよ」とすすめてきたメカジキの照り焼きで代用しました。
メカジキ
砂糖 大さじ1
醤油 大さじ1と1/2
酒 大さじ1
みりん 大さじ1
サラダ油 適量
1. フライパンにサラダ油を入れ、メカジキを焼く。
2. メカジキが焼けたら、調味料を入れて、中火で煮詰める。
3. タレがとろりとしたらできあがり。
いつもはお弁当の主役のはずなのにシウマイに主役を奪われた
『鶏の唐揚げ』
・鶏モモ肉 1枚~2枚
・酒 適量
・醤油 適量
・すりおろし生姜 小さじ1
・片栗粉
1. 鶏肉を一口大の大きさに切る。
2. ボウルに鶏肉を入れて酒と醤油を入れ、よくもみ、30分漬け込む。
3. タレをきって、片栗粉をまぶす。
4. 中温の油で揚げる。
『俵型ごはん』
崎陽軒のシウマイ弁当でおなじみの黒ごまと青小梅が添えられた俵型ごはん。崎陽軒のシウマイ弁当は、栃木産コシヒカリと山形産はえぬきのブレンドが使用されているとのこと。
今回は冷めてもおいしい茨城産コシヒカリを使用しました。やや粘りがあって甘くておいしいお米でお弁当用にもおすすめです。
『青小梅』
お弁当の小梅といえば赤色ですが、崎陽軒は青色。梅干しではなくカリカリ梅ですね。
崎陽軒さんに聞いてみたところ、当初より青小梅を添えており、ずっと変えていないスタイルとのこと。
完成
おかずが11品と多くてけっこう手間がかかりましたが、なんとか再現できました。おかずが豊富だと、弁当を食べているときのうれしい顔を想像しちゃいますね。
いまではスーパーでお馴染みの赤い箱のシュウマイですが、崎陽軒が冷めても美味しいシュウマイを開発したのは昭和のはじめのこと。美味しさが変わらないように当時より自然の調味料のみで作る伝統が守られているのは安心ですね。
そんな手軽に購入できる赤い箱のシュウマイをささっと詰めてお弁当にするのもおすすめです。
使用した曲げわっぱ弁当箱は秋田大館のりょうび庵で手作りされる伝統工芸品の
「こばん弁当箱」です。ご飯やおかずの湿気をほどよく吸って、美味しさをずっと保ってくれる秋田杉の曲げわっぱが、旅弁当の気分を高めてくれます。
記事で紹介した商品『りょうび庵 曲げわっぱ弁当』は下記の店舗で取り扱っています。
「大館まげわっぱ」をつくる新しい会社として − 秋田大館のりょうび庵が目指すもの
りょうび庵を訪ねて
伝統工芸の業界では歴史の古い会社が多いように思いますが、秋田の伝統工芸「大館曲げわっぱ」を製作するりょうび庵は業界に長く携わってきたふたりが設立した新しい会社です。
私たち「りょうび庵」では
伝統的工芸品の大館曲げわっぱを継承し、伝統に新たなデザインを加えたものづくりをベースに、消費者と作り手のコミュニケーションを重んじたものづくりを目指しています。
引用:https://www.ryobian.jp
「新しい会社としていろいろなことに挑戦していきたい」と語る伝統工芸士の成田敏美さん。もうすぐ70歳だそうですがとても若々しくフレッシュな印象で、ものづくりを楽しむ姿、優しい笑顔にさっそくファンになってしまいました。
「定番製品だけでなく、依頼のあるオリジナル製品の注文なんかもどんどんやりたいと思っているんですよ。普段と違うことをやっていると新しいアイディアが浮かぶきっかけになりますし、それに「へそ曲がり」だからね。」
そう言ってにこやかに笑う成田さんに、曲げわっぱづくりをはじめられたきっかけからお聞きしましたよ。
50歳からの新しい挑戦
成田敏美さん(以下、成田)
「50歳の時に『工房るわっぱ』を開いて曲げわっぱづくりをはじめ、いまは69歳。元々は曲げわっぱ販売会社の営業マンだったんですが、ずっとつくることに興味があったので起業しました。そしていまはりょうび庵の専務として製作の分野を中心にがんばっています。」
「若い頃から修行して曲げわっぱをつくってきたわけではないのでいい意味で凝り固まった先入観や基本がないし、見よう見まね。だから、おもしろいものや他の人がつくらないものをつくるのが好きですね。この年だと定年退職して家でゴロゴロしている人たちもいるけど、自分はこの年でも曲げわっぱづくりを楽しんでいます。」
シンタニ
「もともとは曲げわっぱの営業をされていたんですか!営業とものづくりでは同じ曲げわっぱでも分野が180度違いますし、50歳で新しい挑戦をはじめられたというのはすごいエネルギーですね。」
成田
「ものをつくる感性は自然に育つものではないと思います。私は営業マンとしての経験から、営業目線で曲げわっぱづくりをスタートしているというのが活動の中でプラスになっているんじゃないかな。」
「例えば、パンに関する製品をつくりたいというのは、営業目線からのアイディアでした。営業と製作は分野は違うけどつながっているんですよね。ただ工程をこなして道具をつくるだけだなんてもったいないから、「会社にある材料を使って自分の好きのものをつくってみろ」と若いスタッフたちによく勧めています。ものをつくる楽しさがわいてきて、思いもよらないアイディアにつながるんですよ。」
シンタニ
「そんな成田さんの姿勢や思いが、他のスタッフの皆さんにも伝わっているのでしょうね。工房に入ってすぐ感じたのが和やかないい雰囲気。きりきりと緊迫していたりしないですよね。」
成田
「みんなの中でコミュニケーションだけは意識しています。ワイワイやりながら、はっぱかけられてやってるよ。笑」
スタッフの方が「成田ご夫婦はとてもお似合いなんです」と笑顔でおっしゃっていたのが印象的で和やかな空気感が伝わってきます。
シンタニ
「工房の中で成田さん夫婦がいい役目を果たしていらっしゃるんですね。」
成田
「いやいや(笑)。女房は「工房るわっぱ」をはじめた頃から手伝ってもらうようになって。若いスタッフ2名、パートスタッフ数名の工房でみんなに何でもやってもらわないといけない環境です。それが小さい工房の強みだと思っています。」
小さな工房だから家族的な雰囲気というのが大事なんですね。皆さんの関係がとても素敵でした。
若い世代に覚えてほしい「ものをつくる楽しさ」
ものづくりを行っていくなかで厳しい局面もあるとは思いますが、なんとなくお互いを気遣いあっている感じがにじみ出ている皆さん。そんな雰囲気は、成田さんの若い世代との関係づくりの結果なのだと思います。曲げわっぱづくりの難しさとともに若い世代に期待することを聞きました。
成田
「曲げわっぱをつくるには、木を曲げるために熱湯が必要になりますが、うちでは電気の機械じゃなく、いまだに昔ながらのストーブを使っています。電気は急激に温度が上がってしまうから昔ながらのストーブのほうが好きで。素材の秋田杉は曲げると何割かは折れてしまう。実際に曲げてみるとボキボキ折れてしまって言うことを聞かない木もあるんだけど、それは曲げてみるまでわからない。その点はやっぱり木は生き物ですね。表面がきれいでも中が折れていることもある。それにうちの弁当箱は曲がり具合が急なのに、その割には3ミリくらいの厚みでやっているから大変ですよ。」
シンタニ
「やはり曲げる工程はひと苦労なんですね。伝統工芸、一般的には後継者や道具職人の問題などいろいろあると思いますが、今後この工房や曲げわっぱの業界をどんなふうにしていきたいとお考えですか。」
成田
「若いスタッフたちに、ものをつくる楽しさを覚えてもらうのが一番大事じゃないですかね。将来独立したいならそうすればいいし、ある程度の技術が身につけば好きなように挑戦してほしいと思います。やっぱり、ただ言われたことだけやってるだけではおもしろくないですよ。つくってみたいものを考えて実際につくって、提案してプレゼンして・・・と自分でやっていったらいいですよ。定年がない仕事ですし毎日忙しいですよ。人生死ぬまで働きますよ(笑)。なによりやりがいがあるし、楽しいから続けたいですね。」
シンタニ
「昔の職人の「技を盗め」みたいな考え方とは対照的に「なんでもいいから作ってみろ」と思ってもらえる若いスタッフは幸せですね。」
成田
「自分も昔のような師弟関係を経てきたわけではないし、この工房では師匠と弟子みたいな垣根はないんですよ。スタッフたちとは年齢の差が30~40代違うし、自分たちから彼らの中に入っていくような気持ちでいないと垣根はなかなか埋まらないですよ。それが僕たちのスタイルです。うちの社長も含めてコミュニケーションをできるだけとるようにしています。いちがいにどの方法がいいとも言えないし、人にもよるし、反発する人だっている。でも、うちの工房ではこんなやり方が合っていると思います。」
これからのりょうび庵
若い世代にはものづくりの楽しさを感じてほしいと願う成田さん。50歳からものづくりをはじめた成田さんだからこそ、楽しさに重きを置いて若い世代を見守っていけるんでしょうね。また、待っているのではなく自分のほうから若い世代に近づいてコミュニケーションを図るというのは、なかなか簡単ではない気がします。世代を超えて、スタッフみんなで新しい曲げわっぱを探求しているりょうび庵、今後はどんなふうに発展していかれるのでしょう。
シンタニ
「りょうび庵として目標はありますか?今後はどのように進んでいきたいですか?」
成田
「つくる面では、定番製品だけだとおもしろくないから、自分たちでこんなのやってみようとか、コラボしてみようとか、新しいアイディアをどんどん形にしてみたいですね。売れる売れないを考えると何もできないから。チャレンジしてやっていくなかで、これが自分たちの糧になるなというものを見つけていくしかないですよね。大館の曲げわっぱのメーカーは少なくなりましたし、素材としての秋田杉もいいものが少なくなりました。上を見すぎても、悲観しても仕方ない。いまは秋田杉で作られるものが「大館まげわっぱ」と認識されているんだけれども、例えば曲げるという技法は活かしつつ、ほかの木を素材として使ったり、いろいろチャレンジして適材適所で使うというような工夫も必要になる時代がくると思います。天然の秋田杉はいまではもうほとんどないから。いま使っている杉は樹齢100年ちょっとだけど、それでも曲げると折れるものも多いので。」
シンタニ
「そうなると将来、秋田杉以外の素材で作られた曲げわっぱが出てくるかもしれないですね。」
成田
「いまある常識にとらわれず、でも技法が守られていれば「曲げわっぱ」の技術が受け継がれていくだろうし、「普通」から抜け出してみるとぜったいにおもしろいものがつくれると思います。例えば、曲げた木が折れてしまったとき、そこで終わるのではなく、折れた木どうしを組み合わせたりして試行錯誤していたら、そこからバスケットという製品が生まれたりしました。全ての部分が曲げわっぱじゃなくてもいいわけなんで、インテリアとか家具の一部に曲げわっぱの技法を使う、というようなことにも挑戦してみたいです。いろんなものを提案していけたらいいのかなと思います。」
シンタニ
「成田さんの新しい発想から生まれるユニークな製品、とても楽しみです!私たちが考えつかないようなものをきっと作られるんでしょうね。」
成田
「僕は図面を書かないんですよ。その通りにつくってもいいものができるとは限らないし。まずは手を動かしてみて調整しながら試行錯誤を繰り返していく。だから無駄が多いんですよ。でもその「無駄」がいい何かにつながる。感性は若い人に合わせながら、指導ではなくて共同戦線だね。お互いにああすればいい、こうすればいいなんて言いあって。」
素材や技法の取り入れかたを試行錯誤した新しい曲げわっぱ、楽しみじゃないですか?そういった取り組みは新しいりょうび庵だからこそできる挑戦なのかもしれませんね。お客様からのご注文がたくさん詰まっていて、なかなか自分自身の製作時間を割くことができないようなのですが、忙しい製作時間のかたわら、自分が楽しいと思える製品づくりにもっと積極的に取り組みたいとおっしゃっていました。りょうび庵の新しい挑戦に期待したいですね。
りょうび庵
秋田県大館市東字岩ノ下8番地1
Tel:0186-59-7771
www.ryobian.jp
記事で紹介した商品『りょうび庵 曲げわっぱ弁当』は下記の店舗で取り扱っています。