くらすかたち あたらしいと、なつかしいがつながる暮らし

北欧に学ぶ暮らすかたち
2023.04.06

グニラさんとのFIKAの時間「スウェーデンのイースターを祝う」

伝え手 maya

FIKA(フィーカ)とは、日本でいう10時や3時の「おやつの時間」のような、スウェーデンの伝統的な習慣です。
仕事中のコーヒーブレイクとして同僚とおしゃべりしたり、休みの日に外でちょっとお茶しよう、なんていうのもスウェーデンのFIKA文化なのだそうです。
グニラさんとのFIKAのおともは、手作りの美味しいお菓子。
コーヒーのおかわりもすすみ、時間が穏やかに流れます。
グニラさんのご自宅は愛着のある北欧のものたちに囲まれて、あれにもこれにも胸がときめいてしまう。その中にはお子様がまだ小さい頃に一緒に作った飾りものや、壁に掛かったたくさんの家族写真(ご主人はフォトグラファーなのです)も混じり、肩肘張らないナチュラルな心地よさが満ちています。
日々の暮らしの楽しさを感じられる素敵なおうちの空間でゆったりと過ごすFIKAの時間。
グニラさんに教わる、北欧のこと、暮らしのこと、ものやインテリアの色々なこと。
自分らしい暮らしのためのヒントや学びを、ゆるり綴っていこうと思います。

*FIKAは日本語では”フィーカ”と表されることが多いですが、スウェーデン語の発音は”フィーキャ”の響きに近いです

セムラを食べながらイースターについて教わりました

遅く咲いた梅も、もう満開。
3月になったばかりの暖かい日に、グニラさんのお宅へおじゃましました。

今日のFIKAのおともはスウェーデンの伝統菓子『セムラ』です。
ダイニングに続く隣りのキッチンでは、グニラさんが手際よくセムラを作っていました。

丸いパンの上の部分を薄く切り取ると、
「ここにアーモンドペーストを入れますね。」と、
茶色いバターのかたまりのようなものを小さく切ってパンの真ん中に差しこんでいきます。

「これはね、卵白とお砂糖とアーモンドだけでできているのだけど、日本ではほとんど売っているのを見ないわね。」
確かに日本ではあまり馴染みは少ないと思います、初めて見ました、と答えると
「そう?それじゃあ良かったら食べてみて。」
と、味見用に切り分けてくれるグニラさん。
思ったよりも甘さ控えめでなめらかな舌触り。アーモンドの風味がとても豊かです。
「甘くないでしょう?だから生クリームはたっぷりの方が美味しいのよ!」

「もうちょっと?もうちょっと欲しいでしょう?」と張り切ってたっぷりと生クリームを絞ってくれるグニラさんに

「わあ、もういいです~!」なんて、幸せなやり取り。

最後にさっき切り取った蓋の部分を帽子のようにちょこんと載せて。
仕上げに粉砂糖を振って完成です!

セムラとともに席につくと、ちょうど視線の先に、枝に刺さったビビッドなイエローとパープルの羽根飾り。
「いま出しているイースターの飾りはまだこれだけなのよ。」
そういえば、セムラもイースターの時期に食べるもの、ということで
私たちはちょうどイースターの直前にお邪魔したようです。

コーヒーを淹れていただき、FIKAの時間の始まり。
今日のFIKAのおとも、セムラをさっそくいただきます。

セムラは見た目は完全におやつだけれど、パンも生クリームも甘さはかなり控えめ。
朝起きたてでもペロッといただけそうなほどに優しい。
パンはやわらかいのだけれど、ふわふわという感じではなく密度のしっかりした生地です。
スウェーデンでは温めたミルクに浸してシナモンを振って食べる人も多いとのことで、浸した時にやわやわになりすぎないパンの固さがちょうどいいのかもしれません。
食べごたえもおいしさも100点満点!

飾り付けを楽しむのがスウェーデンのイースター

セムラを食べ終わると、イースターに向けこれから飾り付ける予定の小物たちを広げて、スウェーデンのイースターについて説明してくれました。

そもそもイースターについてあまりよくわかっていない私たちのために、グニラさんが「スウェーデンの祝祭日と伝統行事」について書かれた日本語のパンフレットを持ってきて、楽しく説明を続けます。

「イースター」とはキリストの復活祭のこと。
処刑されたキリストが予言通り復活したことを祝う、キリスト教圏での行事です。
ヨーロッパの多くの国では、イースター当日は祝日。
日付は「春分の日以降の最初の満月の次に迎えた日曜日」とされているため、毎年異なります。
昔はイースターまでの40日間は断食をした時代があり、断食の前にはご馳走を食べるという風習があったそうです。
その時のご馳走の中に、セムラが登場します。セムラを大きく作るのは、しばらく食べられないから!だったのかもしれません。

そしてイースターといえば、卵やウサギやニワトリのイメージがあります。
諸説あるようですが、生命誕生の象徴といわれる動物がモチーフになっているようですね。

日本で買ったものもありますが、ほとんどがスウェーデンから持ってきて大切にとっておいたもの。
どれもこれも本当に可愛らしいです。

飾り付けは家族から受け継いだ大切なものを

スウェーデンの家族から受け継いできたというテーブルランナーを見せてくれます。
「この花はね、スウェーデンではポスクリリアと呼ばれています」
ポスクリリアは日本語に直訳すると、「復活祭の百合」。
日本でも春先に咲くこの水仙の花は、スウェーデンではイースターに欠かせない、象徴の花です。

日本人の私は春の花といえば、満開の桜の優しいピンク色を思い浮かべます。
スウェーデンの人々は、黄色の水仙が咲き乱れる野の景色を想像するのでしょうか。

 

「これはちょっと穴が空いちゃっているんだけど、そーっと使っているのよ。もう100年以上も前のものなの」

もう一枚は薄く繊細な布地に、ステッチが細やかな刺繍がとっても素敵。
大切にずっと引き継がれ使われているこのテーブルセンターには、スウェーデン語でハッピーイースターと書いてあります。

 

グニラさんのイースターコレクションは、ほとんどが卵とニワトリ。
ウサギもまたイースターの象徴として有名ですが、スウェーデンでは卵とニワトリのモチーフばかりだったとのこと。
余談ですが、アメリカやドイツのイースターではウサギのモチーフをよく見かけるように思います。
調べたところ、イースターバニーが現れたのはドイツが起源と考えられているとの資料を発見。
国や地域や宗派によって、イースターの雰囲気は少し異なりそうですね。

小さな魔女に出会えるスウェーデンのイースター

スウェーデンのイースターのお話の中でとくに面白かったのは、魔女の話。

キリストが生き返るイースター前日の土曜日には特に魔法が強くなり、ほうきで飛んでくるとされていました。イースターの期間には魔法の威力が増した魔女たちが世を徘徊し、魔法をかけると信じられてきたのだそう。

この怖い魔女のエピソードは、子どもにとってはイースターの楽しいイベントの一つになっているそうで、
「子どもたちはほうきを持ってね、魔女に仮装して近所の家のチャイムを押してお菓子をもらうの。ちょうどハロウィンのトリックオアトリートみたいにね。それと、魔女は火を怖がるからということで近所のあちらこちらで焚き火をしているのだけど、まだ春先でちょっと寒いから、あったかくて子どもはすごく楽しいのよ。」
思い出話をするように教えてくれるグニラさんの表情は、いたずらっ子のようで、とても楽しそう。

そうして土曜日が終わり、イースター当日の日曜日の朝になります。
「日曜日はお祝いで卵をたくさん食べるの。うちはニワトリを飼っていたから卵がいっぱいあってね。兄弟たちはすごい量を食べていたけれど、私は5つしか食べられなかった」
卵をほお張る子どものグニラさんを想像すると、おもわず笑みがこぼれてしまいました。

いままであまり知る機会のなかったイースターのこと。
グニラさんの美味しいセムラとともにイースターカラーに満ちたFIKAを過ごさせていただき、スウェーデンの家庭でのイースターの様子を少しだけ思い浮かべることができたような気がします。
宗教的行事ですが、構えすぎずに、春を楽しむという観点で、日本の暮らしの中にも取り入れることができそうですね。

スウェーデンの伝統菓子セムラの作り方

グニラさんから教えてもらった今回のFIKAのおとも「セムラ」のレシピをご紹介。

材料
マーガリンもしくはバター 75g
牛乳 300cc
小麦粉 900cc
重曹 ティースプーン2分の1
砂糖 100cc
ドライイースト 12g
卵 1個
卵 1個(パンに塗る分)
生クリーム お好きなだけ(多めが美味しい!)
作り方
① バターを溶かし牛乳を加える
② 小麦粉、重曹、砂糖、ドライイーストをボウルで混ぜる
③ ①を②のボウルに加える
④ 卵を入れて、こねる
⑤ 30分休ませる
⑥ 30等分に丸く成形して、再度30分休ませる
⑦ 塗る用の卵を泡立てて、生地に塗る
⑧ 250°で5~8分焼く
⑨ 焼き上がったセムラの上部をそれぞれ薄く切り取る
⑩ セムラの中にアーモンドペーストを埋めこむように入れて、生クリームをたっぷり搾り、⑨で切り取った部分をその上に載せて完成!
⑪ お好みで粉砂糖を振りかける