くらすかたち あたらしいと、なつかしいがつながる暮らし

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グニラさんとのFIKAの時間「ミッドサマー(夏至祭)を楽しみましょう!」

FIKA(フィーカ)とは、日本でいう10時や3時の「おやつの時間」のような、スウェーデンの伝統的な習慣です。
仕事中のコーヒーブレイクとして同僚とおしゃべりしたり、休みの日に外でちょっとお茶しよう、なんていうのもスウェーデンのFIKA文化なのだそうです。
グニラさんとのFIKAのおともは、手作りの美味しいお菓子。
コーヒーのおかわりもすすみ、時間が穏やかに流れます。
グニラさんのご自宅は愛着のある北欧のものたちに囲まれて、あれにもこれにも胸がときめいてしまう。その中にはお子様がまだ小さい頃に一緒に作った飾りものや、壁に掛かったたくさんの家族写真(ご主人はフォトグラファーなのです)も混じり、肩肘張らないナチュラルな心地よさが満ちています。
日々の暮らしの楽しさを感じられる素敵なおうちの空間でゆったりと過ごすFIKAの時間。
グニラさんに教わる、北欧のこと、暮らしのこと、ものやインテリアの色々なこと。
自分らしい暮らしのためのヒントや学びを、ゆるり綴っていこうと思います。

*FIKAは日本語では”フィーカ”と表されることが多いですが、スウェーデン語の発音は”フィーキャ”の響きに近いです

スウェーデンのミッドサマー(夏至祭)とはなんでしょう?

6月下旬、関東地方は梅雨まっただ中。

グニラさんのお宅へ伺うと、玄関横に植えられた鮮やかな青紫色の紫陽花がまずは私たちをお出迎えしてくれました。

今回のFIKAのテーマはミッドサマーです。

ミッドサマーとは夏の到来を祝うスウェーデンで開催されるお祭りのこと。(スウェーデン語ではミッドソンマルと言うそうです)

スウェーデンに住む人々にとっては、冬のクリスマスと同じくらいに大きな夏のイベントなのだそう。

待ちに待った夏を喜び祝うという感覚に共感、とまではいきませんが、以前は夏至のことを「一年で一番日が長い日」というほどにしか認識していなかった私でも、夏の北欧に何度か足を運ぶ機会を得てからはその感覚が少しわかるような気がしています。

夏至の日は世界共通で年によって変わりますが、6月22日頃です。

日本ではジメッとした湿気のジリジリ暑くなる日々が続きますが、北欧地方では夏の到来を感じさせる眩しい日差しの日が多くなります。

白夜のため22時頃でもまだ明るくて、日が昇る時間もまた早いので朝晩の気温差も穏やか。

湿気もなくテラスで朝から晩までぼーっとしていたいほど、とても過ごしやすい気候なのです。

グニラさんが子どもの頃の冬の話を教えてくれました。

「冬の間は学校に行く時間も帰る時間も真っ暗なのよね。だから、朝ごはんの後にはビタミンDを飲むのが日課だったし、授業の間の10分間の休憩時間には、少しでも太陽の光に当たるために、みんな外に出て日光浴をしなければならなかったのよ」

日照時間の極端に少ない暗い冬の季節に耐え、5月まで続く長く厳しい寒さを乗り越えてやっと来る明るい夏。

北欧の人々にとって太陽の下で過ごせる夏の時間は、本当にとても貴重なのだと感じます。

ミッドサマーのテーブルセッティング

この日のグニラさんのダイニングテーブルの上は、スウェーデンカラーの青と黄色が鮮やか。淡いグリーンも散りばめられて、初夏らしいとても爽やかなセッティングです。外はムシムシしているので、室内に招かれて涼やかなしつらえに、まずは目が喜んでしまいます。

テーブルの主役は卓上サイズのミッドサマーポール。

その奥にはスウェーデンの民族衣装を着て踊る人々のペーパーデコレーション。

実際のミッドサマーのお祭りもこんなふうにポールを囲んで、みんなでフォークダンスを踊るのだそうです。

ミッドサマーを喜ぶ楽しいお祭りの雰囲気にワクワクします。

庭の小さな花々と一緒に花瓶に飾られているのはディルの花。

繊細だけれど大きな丸いシルエットがパッと目を引きます。

ディルはスウェーデンの食卓には欠かせない風味付けの薬草ですが、花の部分をこんな風に飾りにも活用できてしまうなんて、グニラさんのアイディアは自由で素敵です。

自宅で楽しむミッドサマーのデザート作り

さて、今回の楽しみなFIKAのおともはロールケーキだそう!

「スウェーデンではこの時期がイチゴの美味しい季節なのよ。だから今日もロールケーキにイチゴを使おうと思ってスーパーマーケットを2軒も回ったんだけど、見つけられなかったの。日本のイチゴのシーズンはやっぱりもう過ぎちゃってるからよね。」

と、グニラさんはケーキの生地を天板に流し込みながら教えてくれました。

ミッドサマーのデザートには、スウェーデンではこの時期が旬のイチゴ、と決まっているのだそう。

「それでね、どうしようかなと思ったけれど、代わりにこんなのもアリかな?と思って、これを買って来てみたの。」

と楽しそうに笑いながらグニラさんが見せたくれたのは、イチゴ味のコアラのマーチ!

「ピンク色で可愛いでしょう?ケーキの上に載せたらいいわよね?」とニッコリ。

あれがない、よりもこれを代わりにしたらいいじゃない、と自然に考えられるグニラさんの発想に胸がキュンとします。

四角く構え過ぎずに自分なりにラクに暮らしを楽しむ、ってこういうところ。

焼きあがった生地に手作りのイチゴジャムをたっぷり塗って、グニラさんは手際よくくるくると巻いていきます。

巻き終わった表面には、いつの間にか仕込まれていたココナッツフレークがまぶされていて思わず、わあっと小さな歓声が出てしまいます。

「ココナッツはね、別になくてもいいのだけど、このほうがお洒落になったわよね。」

いくつになっても、こんなまっ直ぐな気持ちでおもてなしがしたい。

相手と自分がいっしょに楽しく過ごす時間のために。

グニラさんのロールケーキからは教わることばかりです。

ケーキのロールは厚めにカットして、上にはたっぷりの生クリーム。

サービス精神旺盛なグニラさんは、いつも嬉しそうにたっぷりと生クリームを絞ってくれます。

それだけで、自分で絞るより何倍も美味しそうに見えてしまうのはなぜでしょう。

仕上げにクリームの上にイチゴ味のほんのりピンク色のコアラのマーチを載せて、完成です!

FIKAでミッドサマーを楽しむ!

さあ、主役のロールケーキをいただきます。

焼きたてのふわふわな生地がとっても優しい美味しさです。

テーブルの上にはよく冷えたヨーグルトケーキ(夏の間はよく作るそう)や、キャラメルクッキーまで並んでいます。

取り皿までミッドサマーなFIKAが始まりました!

このお皿のセットは、おばあさんからグニラさんが受け継いだもの。

取り分ける前のロールケーキが盛られていた大皿にはスウェーデンと書いてあり、代表的な青と黄色のスウェーデンの民族衣装を着て踊る親子が描かれています。

取り皿のほうにも町や村の名前が書いてあり、それぞれの地方独自の民族衣装を身に付けた人々が描かれています。

民族衣装と一口に言っても、スウェーデンでは町や村によって色や柄にさまざまな違いがあるのだと知りました。

描かれた人々はダンスをしていたり野菜を採った帰り道のようだったり、スウェーデンの夏のワンシーンが切り取られているのだと感じます。

愛らしい草花模様で縁取られているのも、お花のベストシーズンであるミッドサマーにピッタリです。

可愛らしいスウェーデンの手作り民族衣装

ロールケーキを頬ばりつつ取り皿の絵柄を見比べながら、グニラさんの育った町の民族衣装はどのようなものだったのかを尋ねてみると、なんと一着お持ちということで、見せていただけることになりました。

針仕事ではセミプロの腕前を持つ叔母さまが作った、それを譲り受けたものだそう。

スカートとブラウス、それにエプロンとベスト、付け襟に帽子まであります。

この民族衣装はグニラさんの育った町のお隣のご両親が生まれた町のデザインで、やわらかな白、赤、ピンク色のカラーコーディネートになっています。

グニラさんがこの衣装を身につけ、娘さんの結婚式に参列した際の写真も見せていただきました。

正装としても使える民族衣装というところでは、日本の着物と同じようなものなのかもしれませんね。

それぞれのアイテムがとっても可愛らしいスウェーデンの民族衣装。

帽子、被らせてもらっちゃいました。

森で木の実や花を摘んだり、外で踊ったりしても、洗える丈夫な木綿の素材であったり、自然の景色に馴染む素朴な色合いというところも、スウェーデンらしい気がします。

赤ちゃんからお年寄りまで似合いそうなレース付きのデザインにほっこりしちゃいます。

我が家のミッドサマーポールの思い出

ミッドサマーのお祝いに欠かせないミッドサマーポール。

メイポールやスウェーデン語でマイストング、ミッドソンマルストングとも呼ばれています。

町の集会所の周りや公園にミッドサマーポールを立てて、人々はその周りを囲んでフォークダンスを踊り、ミッドサマーをお祝いします。

お祭りが終わると、ポールから飾りの草花を取り、横に倒した状態のまま保管します。そしてまた次の夏に、再び白樺の葉と季節の野花でポールをデコレーションして使うのです。

そんなミッドサマーポールを手作りしてお庭に立てるご家庭も多いようです。

グニラさんのお姉さんのご家族が作ったのは、大人の背丈ほどの高さのもので、子どもたちで飾りつけをしていたそうですが、そういうシーンは故郷の良い思い出のひとつになるのだろうなあと感じました。

大きいポールを立たせる時は、写真のように大勢の大人の男性が少しずつ立たせていきます。

「最初は子どもたちも一緒にみんなで手伝った後に、大人の男の人たちが頑張ってウーンウーンと引っ張るのだけど、何10メートルもあるような大きなポールだと、ちゃんと最後まで立たせられるかどうか、ドキドキして見ているのが楽しかったのよ。」

そう教えてくれるグニラさんの顔からは、楽しかった思い出が伝わってきます。

ミッドサマーの夜のロマンチックな言い伝え

スウェーデンのミッドサマーには、こんなロマンチックな言い伝えも。

野外でダンスを踊るミッドサマーの夜、家に帰る前に野の花を7種類摘んで、それを枕の下に敷いて寝ると、将来の結婚相手を夢に見る、というものです。

必要な花の種類は7種類のところも9種類のところもあるようで、地域によって伝わり方は違うようです。(ノルマは少ない方が達成が楽ですね)

グニラさんはどんな夢を見たのでしょうか?

「私の夢は真っ黒だったのよ。おかしな夢、と思っていたけれど、あれは日本人の夫の頭の後ろ姿だったのね。出会った頃は髪も黒くて量も多かったから。やっぱり当たるのね!」とグニラさん。

お茶目なグニラさんトークには大盛り上がりしてしまいました。

ミッドサマーお天気アルアル

ミッドサマーではあまり晴れることがない、と言われるほど、お祭りの日のお天気はいまいちなことが多いそうです。

「いい天気だと、あれ?今年はいい天気なの?!と驚くくらいよ。」とグニラさん。

日本の夏至の頃では、雨が降ると余計に蒸し暑くなってしまいますが、湿気のないスウェーデンでは、太陽が隠れてしまうと結構寒いのだそうです。

晴れていて気持ちよく過ごせる時期なのに、お天気は気まぐれですね。

娘さんが小さい頃にミッドサマーに参加した時には、可愛いワンピースだけではとても寒くて、ズボンやカーディガンも一緒に着せたくらいよ、という思い出話も。

それでも無理矢理にでも必ず屋外で食事をして、ダンスをしてお祝いするのだそうです。

ミッドサマーのディナーメニュー

今年の夏至の日は外のテラスで食べたのよ、と言ってグニラさんがスマートフォンに残したミッドサマーディナーの写真を見せてくれました。

「ミッドサマーの食事は新じゃがいもがメインかもしれないわね。ディルと一緒に茹でたのよ。」

ヨーロッパ圏では主食のじゃがいも。

日本人が毎年、美味しい新米を楽しみにしているのと同じように、旬の新じゃがいもを食べられることはミッドサマーの楽しみのひとつなのですね。

じゃがいもの他には、IKEAで調達したサーモンとニシン、それからローストビーフにサラダ。

この日はスーパーでイチゴも手に入ったので、デザートには念願のイチゴも食べたそうです。

すべてが手作りではなくても、買ってきたものも、少しの手間をかけて器に盛ってテーブルセッティングをする。

「そうするだけでも気分が違うでしょう?」とグニラさん。

器にもこだわりのあるグニラさんだからこそかもしれませんが、日々の暮らしの中での力の抜きどころ、力の入れどころ、勉強になることばかりです。

日本の夏を自分らしく楽しむ

夏の夜のお祭りで民族衣装を着て、皆で踊る。

スウェーデンのミッドサマーのお話はすべてが新鮮だったのに、浴衣を着て盆踊りをした夏祭りの楽しかった記憶がよみがり、懐かしい気持ちも込み上げてきました。

「I believe in Summer!」

ミッドサマーを歌う曲の歌詞を解説してくれたグニラさんが言っていました。

梅雨、湿気、酷暑と、日本の夏は大変なところもあるけれど、夏を信じるマインドがあれば、工夫しながらこの季節をもっと楽しめるような気がします。

ミッドサマーを彩るイチゴのロールケーキの作り方

グニラさんから教えてもらった今回のFIKAのおとも『イチゴのロールケーキ』のレシピをご紹介。
(今回はイチゴの代わりにイチゴ味のお菓子を添えて)

材料
卵 3個
小麦粉 200cc
重曹 小さじ1
砂糖 150cc
イチゴジャムまたはコンフィチュール お好きなだけ
生クリーム お好きなだけ(多めが美味しい!)
イチゴもしくは代用のお菓子 上に載せる分
ココナッツフレーク お好みで
作り方
① 卵と砂糖をボウルに入れ、ふわふわになるまでよく混ぜる
② 小麦粉と重曹を混ぜて、①に加え混ぜ合わせる
③ 250°に予熱したオーブンで5分焼く
④ お好みで生地の表面にくる側にココナッツフレークをまぶす
⑤ 生地が温かいうちに、内側にくる側にイチゴジャムなどを塗る
⑥ 巻き上げたら、巻き終わりを下にして少し冷ます
⑦ 5cmくらいの厚めにカットし、生クリームを絞る
⑧ 生クリームの上にイチゴやイチゴ味のお菓子を載せて完成!

ししゅうつなぎの生まれる場所へ(3)

(2)のつづき

ししゅうつなぎができるまで

1955年創業 村田刺繍所三代目の村田欽也さん

村田社長に「ししゅうつなぎ」が生まれた背景についてお話をうかがいました。

「一針千心」のものづくり

弊社は家族主体の企業ですので、生まれた時から刺繍業に携わっている人も多く、パートの従業員さんも親戚関係。気持ちも環境も刺繍に向いている人だけで仕事をしています。

企業理念である「一針千心」は、一針ひと針に真心を込めて、買っていただいたお客様に喜んでいただきたい、そういう顔を見たい、という思いから、品質にこだわったものづくりをしていく志を表しています。

創業当時は横振りミシンを使って着物や和装関係の服資材に、終戦後にはアメリカ兵に日本の土産品として人気のあったスカジャンに刺繍を行っておりました。
機械が発展し始めた頃からは、多頭式コンピューターミシンを導入して刺繍加工をしてまいりました。
刺繍のアクセサリーを作り始めたのは、2000年代の初頭に流行った刺繍のブレスレットの影響を受けたレース屋さんから依頼があったのがきっかけでした。

でも作るうちに、せっかくこれだけ自分たちに技術があるのだから、委託だけでなく自分たちのブランドとして世に出していきたいという思いがやはり湧いてまいりまして、そうして自社ブランドの刺繍ネックレスを制作するようになりました。

小枝をモチーフにしたアクセサリー

ししゅうつなぎは、2019年の9月頃から企画がスタートして、半年ほどの制作期間で完成しました。
その間、デザイナーの秋山かおりさんとのやり取りはもう何度あったのか、わからないほどです。

秋山さんが子供の頃に道ばたで拾った小枝をネックレスにしたことを思い出して最初に完成したのが、ブラウンが主体の「小枝」です。
そのあとに「小花」と「小雪」。
そのほかに金、銀、銅の3種類は、アクセサリーらしい光沢のあるものも作りたくて作りました。

作業工程は、デザインをコンピューターミシンに読み込み、オリジナルの溶ける紙に刺繍をしたら、洗いにかけ土台の紙を全部溶かし刺繍だけを残します。
その後、刺繍を成形しながら乾かします。
最後にパーツひとつひとつを検品してから、手作業で繋げていきます。

機械というと、機械が全てやってくれると思ってしまうかもしれませんが、多数ある工程の中でも人が介入する場面は多く、またそうでないといいものは作れないと考えています。

繋ぎ目は、ししゅうつなぎの命となるところ。
ひとつひとつのパーツをお客様自身で自由に組み合わせができる構造、ということは、誰でも取り外しやすく、しかも外れにくい、を両立させるということで、そこが制作過程において一番難しかった部分ですね。

自由に楽しく、使っていただく

本当に面白い形なんですよね。
ひとつのパーツに丸い穴が3つ空いているんですけれど、決まった一か所だけに通すわけじゃないから、繋ぎ方しだいでその人だけの形を作ることができる。
ししゅうつなぎのメリットは、金属アレルギーの方でも気兼ねなく身に付けていただけるところ。
それから「重たいネックレスをすると肩こりしてしまうけれど、これはものすごく軽いんです。」というお声もよく頂戴します。
しかも、汚れても洗うことができるんです。

お客様から私たちが予想していなかったような「こういう使い方をしたら面白かったよ。」なんていうお声が聞けたら、余計に楽しく嬉しいですね。

村田刺繍所

渡良瀬川が流れ赤城山を望む群馬県桐生市にある、1955年創業の老舗刺繍所。
技術力の必要なレース調の刺繍などを得意とする。
高品質で繊細な刺繍加工は婦人服、紳士服、子供服、及びワッペンやユニフォーム、日用品、小物、雑貨など多岐にわたる。
https://embland.com

中通り大橋

村田刺繍所のすぐ近くを流れる渡良瀬川。
山の稜線、広く澄んだ空。
ししゅうつなぎの生まれる土地の空気を身体で感じて、帰路につく前の深呼吸。
村田刺繍所さん、貴重なお話をありがとうございました。

記事で紹介した商品『ししゅうつなぎ』は下記の店舗で取り扱っています。

ししゅうつなぎの生まれる場所へ(2)

(1)のつづき

村田刺繍所で刺繍のものづくりを見学しました

ししゅうつなぎは桐生市内にある村田刺繍所の刺繍工場で作られています。
可愛らしいクローバーのイラスト入りの看板が村田刺繍所の目印。
今回は特別に工場内を案内していただきました。

工場に入るとまずすぐに目に入るのが、壁一面に並んだ刺繍糸の箱。
300種類以上の刺繍糸が床から天井まで積み上がっています。

桐生刺繍といえば『横振りミシン』

桐生刺繍の代名詞でもある横振りミシンは、使いこなせるようになるまでに10年は確実にかかると言われるほど、高い技術が求められます。
ですが、すでに生産は終了してしまい「現在残る横振りミシン職人は10人もいないのではないか。」とのことです。

村田刺繍所でも創業当時はこの横振りミシンを着物の刺繍に、また戦後にはスカジャンの刺繍などにも使用していました。
工場の中で大切に受け継がれ、もちろん、いまも使用することができます。

巨大な多頭式ミシンに圧倒される

工場の中心で存在感のある、写真に収まりきらないほど長く大きい機械。
多頭式コンピューターミシンです。

こんなに巨大なミシンを見るのは初めて!
多頭式コンピューターミシンは複数のミシンヘッドをコンピューター制御しているので、同じ柄を一度に効率よく、多く生産することが可能です。
機械の均一で正確な作業による仕上がりは高品質で、立体的な帽子やカバンにもスムーズに刺繍を施せます。

その動き方は自由自在。
同時進行でスパンコールを縫い付けることもできるのだそう。
家庭用ミシンとは全くの別物です。

引用:桐生商工会議所 YouTubeより

どのように縫い、どう表現するのかというデザインを起こすのに必要な知識や技術に加え、豊富な経験値も求められる刺繍加工。
美しい刺繍作品を生むための道具として高機能なミシンを扱うことで、複雑かつ繊細な作品が完成されているのだと知りました。

(3)へつづく…

記事で紹介した商品『ししゅうつなぎ』は下記の店舗で取り扱っています。

ししゅうつなぎの生まれる場所へ(1)

桐生のこぎり屋根

刺繍の歴史が刻まれる桐生へ

桐生市は群馬県の東側、栃木県との県境に位置しています。
この日は天気の話が盛り上がるほどうれしい快晴。
気持ちよく澄んだ空のなかに見える赤城山にどんどん近づいていきます。

高速を降りて桐生市に入るとさっそく繊維業の会社の看板がちらほら。
さすが「繊維のまち」ですね。
当店のある千葉県印西市からは車で2時間30分ほどで到着です。
街のなかを進み、まずは桐生市の織物の歴史を知るところから。
最初の目的地、桐生織物記念館におじゃまします。

桐生の織物の歴史を学ぶ

1934年に建てられた桐生織物記念館は、青緑の瓦ぶき屋根の大きく立派な建物で、2階には小ぶりのステンドグラスもあり、まるで異国の洋館のよう。
国の登録有形文化財にも指定されています。

桐生織物記念館

入り口を入ってすぐのところには、見上げて首が痛くなるほど巨大なジャカード織機(しょっき)が設置されています。

ジャカード織機

2階へ昇る広い階段の低めに作られた手すりに、見た目は洋館のようでも日本の建築なのだと実感します。
2階の目の前には組合事務所。今も昔も桐生の繊維業の拠点なのですね。

右に進むと常設の織物展示室があります。
書棚には、昭和30年頃から保存されたテキスタイルをまとめた資料がびっしり。
貴重な資料ですが、なんと素手で直接触って全てが見られます。
当時の実物のテキスタイルがページごとに貼られており、質感まで体感できます。
ページをめくれば「これも素敵、こっちも素敵!」ちゃんと見始めてしまったら一日あっても足りないかも。

織物の展示だけでなく、蚕からどのように糸を紡ぐのかなどを詳しく知ることもできます。

昔ながらの機織りを体験

せっかくなので、機織り体験もさせていただきました。
専門用語の説明を受け、手取り足取り丁寧に織り方を教えてくださいます。
織る時のガシャンガシャンという音は、耳に心地良いですね。

体験用の織り機の隣に数台、かつて桐生で使われていた織り機が並んでいます。
織り機が新しくなるにつれて、素人でもわかるくらいパーツが少なくなり、自動の部分が増えていく過程を見ることができます。

桐生の歴史ある織物文化を象徴するモダンな建物のなかで、デジタルのない時代とは思えない絵画のように美しいジャカード織の多様な作品などを目にすることができました。

桐生織物記念館

所在地:群馬県桐生市永楽町6-6
開館時間:午前10時から午後5時まで
休館日:土日祝日、8月13日~16日、12月29日~1月3日、その他臨時休館あり
https://kiryuorimonokinenkan.com

桐生はのこぎり屋根の街

桐生織物記念館を後にして、桐生の街を散策。
桐生の住宅街の中はどこも細い道で、どこか懐かしい低めの建物が並びます。

街の中を散策すると、のこぎりの刃のような尖った三角屋根がぎざぎざと連なる形状の屋根を持つ建物にちょくちょく出会います。
桐生名物ののこぎり屋根の風景です。
かつては工場だった建物が、のこぎり屋根を残したまま、現在はワインセラーやベーカリーカフェになっていたりもします。

「赤城山の向こう側は雪が降るけれど、この辺は雪よりからっ風」

桐生の街並みに欠かせないのこぎり屋根は、雪の積もらない地域だからこその形でもありました。

旧曽我織物工場
桐生絹織株式会社

旧金谷レース工業株式会社鋸屋根工場(ベーカリーカフェ・レンガ)

桐生市内を走る低速電動コミュニティバス「MAYU」のバス停のサインものこぎり屋根!

続いて、伝統の刺繍技術を見学をしに村田刺繍所さんへ

(2)へつづく…

記事で紹介した商品『ししゅうつなぎ』は下記の店舗で取り扱っています。

グニラさんとのFIKAの時間「スウェーデンのイースターを祝う」

FIKA(フィーカ)とは、日本でいう10時や3時の「おやつの時間」のような、スウェーデンの伝統的な習慣です。
仕事中のコーヒーブレイクとして同僚とおしゃべりしたり、休みの日に外でちょっとお茶しよう、なんていうのもスウェーデンのFIKA文化なのだそうです。
グニラさんとのFIKAのおともは、手作りの美味しいお菓子。
コーヒーのおかわりもすすみ、時間が穏やかに流れます。
グニラさんのご自宅は愛着のある北欧のものたちに囲まれて、あれにもこれにも胸がときめいてしまう。その中にはお子様がまだ小さいころに一緒に作った飾りものや、壁に掛かったたくさんの家族写真(ご主人はフォトグラファーなのです)も混じり、肩肘張らないナチュラルな心地よさが満ちています。
日々の暮らしの楽しさを感じられる素敵なおうちの空間でゆったりと過ごすFIKAの時間。
グニラさんに教わる、北欧のこと、暮らしのこと、ものやインテリアの色々なこと。
自分らしい暮らしのためのヒントや学びを、ゆるり綴っていこうと思います。

*FIKAは日本語では”フィーカ”と表されることが多いですが、スウェーデン語の発音は”フィーキャ”の響きに近いです

セムラを食べながらイースターについて教わりました

遅く咲いた梅も、もう満開。
3月になったばかりの暖かい日に、グニラさんのお宅へおじゃましました。

今日のFIKAのおともはスウェーデンの伝統菓子『セムラ』です。
ダイニングに続く隣りのキッチンでは、グニラさんが手際よくセムラを作っていました。

丸いパンの上の部分を薄く切り取ると、
「ここにアーモンドペーストを入れますね。」と、
茶色いバターのかたまりのようなものを小さく切ってパンの真ん中に差しこんでいきます。

「これはね、卵白とお砂糖とアーモンドだけでできているのだけど、日本ではほとんど売っているのを見ないわね。」
確かに日本ではあまり馴染みは少ないと思います、初めて見ました、と答えると
「そう?それじゃあ良かったら食べてみて。」
と、味見用に切り分けてくれるグニラさん。
思ったよりも甘さ控えめでなめらかな舌触り。アーモンドの風味がとても豊かです。
「甘くないでしょう?だから生クリームはたっぷりの方が美味しいのよ!」

「もうちょっと?もうちょっと欲しいでしょう?」と張り切ってたっぷりと生クリームを絞ってくれるグニラさんに

「わあ、もういいです~!」なんて、幸せなやり取り。

最後にさっき切り取った蓋の部分を帽子のようにちょこんと載せて。
仕上げに粉砂糖を振って完成です!

セムラとともに席につくと、ちょうど視線の先に、枝に刺さったビビッドなイエローとパープルの羽根飾り。
「いま出しているイースターの飾りはまだこれだけなのよ。」
そういえば、セムラもイースターの時期に食べるもの、ということで
私たちはちょうどイースターの直前にお邪魔したようです。

コーヒーを淹れていただき、FIKAの時間の始まり。
今日のFIKAのおとも、セムラをさっそくいただきます。

セムラは見た目は完全におやつだけれど、パンも生クリームも甘さはかなり控えめ。
朝起きたてでもペロッといただけそうなほどに優しい。
パンはやわらかいのだけれど、ふわふわという感じではなく密度のしっかりした生地です。
スウェーデンでは温めたミルクに浸してシナモンを振って食べる人も多いとのことで、浸した時にやわやわになりすぎないパンの固さがちょうどいいのかもしれません。
食べごたえもおいしさも100点満点!

飾り付けを楽しむのがスウェーデンのイースター

セムラを食べ終わると、イースターに向けこれから飾り付ける予定の小物たちを広げて、スウェーデンのイースターについて説明してくれました。

そもそもイースターについてあまりよくわかっていない私たちのために、グニラさんが「スウェーデンの祝祭日と伝統行事」について書かれた日本語のパンフレットを持ってきて、楽しく説明を続けます。

「イースター」とはキリストの復活祭のこと。
処刑されたキリストが予言通り復活したことを祝う、キリスト教圏での行事です。
ヨーロッパの多くの国では、イースター当日は祝日。
日付は「春分の日以降の最初の満月の次に迎えた日曜日」とされているため、毎年異なります。
昔はイースターまでの40日間は断食をした時代があり、断食の前にはご馳走を食べるという風習があったそうです。
その時のご馳走の中に、セムラが登場します。セムラを大きく作るのは、しばらく食べられないから!だったのかもしれません。

そしてイースターといえば、卵やウサギやニワトリのイメージがあります。
諸説あるようですが、生命誕生の象徴といわれる動物がモチーフになっているようですね。

日本で買ったものもありますが、ほとんどがスウェーデンから持ってきて大切にとっておいたもの。
どれもこれも本当に可愛らしいです。

飾り付けは家族から受け継いだ大切なものを

スウェーデンの家族から受け継いできたというテーブルランナーを見せてくれます。
「この花はね、スウェーデンではポスクリリアと呼ばれています」
ポスクリリアは日本語に直訳すると、「復活祭の百合」。
日本でも春先に咲くこの水仙の花は、スウェーデンではイースターに欠かせない、象徴の花です。

日本人の私は春の花といえば、満開の桜の優しいピンク色を思い浮かべます。
スウェーデンの人々は、黄色の水仙が咲き乱れる野の景色を想像するのでしょうか。

 

「これはちょっと穴が空いちゃっているんだけど、そーっと使っているのよ。もう100年以上も前のものなの」

もう一枚は薄く繊細な布地に、ステッチが細やかな刺繍がとっても素敵。
大切にずっと引き継がれ使われているこのテーブルセンターには、スウェーデン語でハッピーイースターと書いてあります。

 

グニラさんのイースターコレクションは、ほとんどが卵とニワトリ。
ウサギもまたイースターの象徴として有名ですが、スウェーデンでは卵とニワトリのモチーフばかりだったとのこと。
余談ですが、アメリカやドイツのイースターではウサギのモチーフをよく見かけるように思います。
調べたところ、イースターバニーが現れたのはドイツが起源と考えられているとの資料を発見。
国や地域や宗派によって、イースターの雰囲気は少し異なりそうですね。

小さな魔女に出会えるスウェーデンのイースター

スウェーデンのイースターのお話の中でとくに面白かったのは、魔女の話。

キリストが生き返るイースター前日の土曜日には特に魔法が強くなり、ほうきで飛んでくるとされていました。イースターの期間には魔法の威力が増した魔女たちが世を徘徊し、魔法をかけると信じられてきたのだそう。

この怖い魔女のエピソードは、子どもにとってはイースターの楽しいイベントの一つになっているそうで、
「子どもたちはほうきを持ってね、魔女に仮装して近所の家のチャイムを押してお菓子をもらうの。ちょうどハロウィンのトリックオアトリートみたいにね。それと、魔女は火を怖がるからということで近所のあちらこちらで焚き火をしているのだけど、まだ春先でちょっと寒いから、あったかくて子どもはすごく楽しいのよ。」
思い出話をするように教えてくれるグニラさんの表情は、いたずらっ子のようで、とても楽しそう。

そうして土曜日が終わり、イースター当日の日曜日の朝になります。
「日曜日はお祝いで卵をたくさん食べるの。うちはニワトリを飼っていたから卵がいっぱいあってね。兄弟たちはすごい量を食べていたけれど、私は5つしか食べられなかった」
卵をほお張る子どものグニラさんを想像すると、おもわず笑みがこぼれてしまいました。

いままであまり知る機会のなかったイースターのこと。
グニラさんの美味しいセムラとともにイースターカラーに満ちたFIKAを過ごさせていただき、スウェーデンの家庭でのイースターの様子を少しだけ思い浮かべることができたような気がします。
宗教的行事ですが、構えすぎずに、春を楽しむという観点で、日本の暮らしの中にも取り入れることができそうですね。

スウェーデンの伝統菓子セムラの作り方

グニラさんから教えてもらった今回のFIKAのおとも「セムラ」のレシピをご紹介。

材料
マーガリンもしくはバター 75g
牛乳 300cc
小麦粉 900cc
重曹 ティースプーン2分の1
砂糖 100cc
ドライイースト 12g
卵 1個
卵 1個(パンに塗る分)
生クリーム お好きなだけ(多めが美味しい!)
作り方
① バターを溶かし牛乳を加える
② 小麦粉、重曹、砂糖、ドライイーストをボウルで混ぜる
③ ①を②のボウルに加える
④ 卵を入れて、こねる
⑤ 30分休ませる
⑥ 30等分に丸く成形して、再度30分休ませる
⑦ 塗る用の卵を泡立てて、生地に塗る
⑧ 250°で5~8分焼く
⑨ 焼き上がったセムラの上部をそれぞれ薄く切り取る
⑩ セムラの中にアーモンドペーストを埋めこむように入れて、生クリームをたっぷり搾り、⑨で切り取った部分をその上に載せて完成!
⑪ お好みで粉砂糖を振りかける

火にかけてから 30 分でおいしいご飯 土鍋ごはんがうまい「伊賀焼 かまどさん」

長谷園 土鍋 炊飯 ごはん お米 ご飯 伊賀焼

「いかに飯をうまく食い、いかに酒をうまく呑むか」

そこに美味しいお米は欠かせない小さな島国とは思えないほど日本にはさまざまなカテゴリーの美味しいものが溢れていますが、食卓には今も変わらず、主食としてお米が出てきます。ずっと食べてきたからなのか、体が必要としているからなのか。毎日食べても飽きないのはなぜでしょうか。「今日、何食べようかな」疲れと時間に追われて準備が面倒な時も、栄養や健康よりも趣向や惰性に振り回される時でも、あれ食べたいこれ食べたいを考える時間は、なんとも幸せなひとときです。想像しただけで料理が出てきたらいいのにと思いながら渋々台所に向かう日も、手間のかかるものをゆっくり作りたい日も、変わりばんこに入れ替わるその日の気分に合わせて料理を進めていきます。暮らしの流れに組み込まれている「食べる」は生きるため。栄養を業務的に口に入れるだけでも成り立つのでしょう。それでも同じ「食べる」なら、身体も心も元気にしてくれる食材で、味や見た目はおいしく、食事の時間を楽しみたい。長谷園のものづくりのもとになっている「いかに飯をうまく食い、いかに酒をうまく呑むか」は死ぬまでそう思っていたいと思います。旅館のような美味しいごはんを家でも炊けると知ってから土鍋を使うようになりましたが、お腹が空いている時に炊飯器の長い炊き上がりを待ちたくないと思っていた自分にはぴったり。炊飯器の設置場所や、ついつい保温しっぱなしの電気代のことを考えても、炊飯器なしの生活が合っているようです。そしてこれだけ家電が進化しても、今でも炊飯器は「かまどや土鍋のような」炊き上がりを目指し、「おひつに入れたような」保温を目指しているといったキャッチコピーを電気屋さんで目にすると、「土鍋を使ってお米を炊く」ことは、「毎日美味しいご飯を食べたい」と思っている自分の正解にも辿りついているのだと思っています。

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かまどさんなら、ふっくらもちもち
日本のお米がもっとおいしい

見た目からもなんだか美味しく炊けそうなかまどさん。かまどさんで炊くと、日本のお米の良さが引き出されていると感じます。かまどさんの材料である伊賀の粗土はおひつのように呼吸するのでベタつかず、ちょうど良い水分量を保ったもちもちとした食感のご飯ができます。炊き上がりに蓋を開けると、つやつやでふかふかで。「ああ今回も美味しそう」って、単純に心が躍るというか、美味しそうなご飯を嬉しいと思える事に感謝したくなるというか、ご飯を楽しめている事に、自分のささやかな暮らしが満たされるような気持ちになります。お茶碗一杯のご飯が美味しいと、主菜も副菜も進み、日々の食事を充実させたくなり、身体をつくってくれる食事に興味を持って料理できる日が増えるように思います。自分自身で自分を豊かにしている体感に嬉しさを感じています。

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伊賀の土が
土鍋に良い理由

炊飯用の鍋を調べると土鍋に辿り着き、そして伊賀土の土鍋に辿り着きます。理由は伊賀の土にあります。昔、琵琶湖の底に沈んでいた伊賀市の土には、何百年も前に生息していた植物などが有機物として配合されています。この有機物は土鍋をつくる過程で、高温の焼き上げの中で発泡し、陶土の中は気泡だらけに。その気泡のおかげで、一度火の熱を蓄熱してから伝えるような構造を作り出し、一気に火を通すことで料理が美味しくなるのです。火からおろしても冷めにくく、弱火でコトコト煮込んでいるように、じっくりしっかり熱を伝えることもできます。強い火力で、一気に蓄えた熱でお米を炊き上げて、そのままじんわりあったかく蒸らすことができる。どんな鍋でもある程度美味しくお米を炊くことはできますが、この特徴を持っていて、土鍋にできるほどの耐火度を持っている日本の陶土は、伊賀の土だけなんだそう。つまり伊賀の土を使ってつくられた鍋にしか、お米をここまで美味しく炊くことができないのだと思います。鍋底に火がよく当たるようにカンナで削ったり、持ち手をつけたり、釉薬をつけるなどの工程は人の手でひとつひとつ丁寧に行われています。釉薬には遠赤外線効果の高いものを使用することで、お米の芯まで火が通り、ふっくらとしたご飯の炊き上がりをサポートしています。

火にかけてから 30 分でおいしいご飯
かまどさん基本の炊き方

まずはボウルで優しくお米を研ぎ、4 ~ 5 回程度水が綺麗になるまで繰り返します。ザルにうつして 5 分、水をきります。そのあとお米に浸水させます。20 分ほどの浸水時間でしたら、かまどさんに入れて浸水させます。20 分以上の浸水は土鍋の特性上、割れやヒビが入りやすくなる原因になりますのでおすすめできませ ん。出かけている間に浸水させておきたいときなど 30 分以上浸けるときには、研いだボウルに戻して浸水して下さいね。お米をいれたらふたをセットします。ふたの付け方ですが、中ふたの穴の位置と、外ふたの穴の位置が直角になるようにすることで、お米にほどよい圧がかかるようにできています。何も考えずに忘れてセットした時も吹きこぼれることなく炊き上がりましたが、少しだけ時間がかかりました。直角にセット、ぜひ忘れずに。ふたがセットできたら火をつけていきます。色の違う底部分の半分くらいの高さに来るように中強火~強火 に設定します。3 合炊きは 13 分。消し忘れないようにタイマーをセットしておきますが、蓋の穴から煙がヒ ューっと出てくるのが 12 分頃。ぽっぽっと短い蒸気のあと、少しするとひゅ~っと勢いよく長めの蒸気が噴 き出してから 1 ~ 2 分後が火の消しどきです。3 合の規定の水量通りに入れればほぼ時間通りに炊き上がりますので、タイマー通りで問題ないと思いますが、蒸気の様子も見てみておくといいです。慣れてくると、だいたいお米よりも 1cm 位上にくるような水の入れ方をしたり、研いだ後に浸水した時間の長さやお米が吸った水の量でも炊き上がりの時間に多少のずれが出ることがあります。炊き込みご飯なども時間が変わってきますので、時間通りに炊けないかもしれないと思う時には、蒸気を頼りにタイミングをみることが大切です。炊き上がり火を切ったらそのまま 20 分蒸らします。つやつやでふかふかの炊き立てご飯の完成です!

ご飯もおかずも美味しく作れる
色々使える万能鍋です

玄米ご飯におかゆやリゾット、お米をさまざまな方法で調理することができるだけでなく、鍋物、煮物にも使うことができます。ぜひご飯を炊く以外にも、鍋としてお使いください。3 合の大きさがあると常備菜や煮物に使いやすく、鍋なら 2 人前にちょうど良いサイズ感です。かまどさんならではの蓄熱効果で予熱調理がで
きますよ。かまどさんの土鍋の内側には広めのふちがあります。内ふたが乗る場所なのですが、煮物や汁物をよそうときに水気を切りやすく、とてもすくいやすいです。ちなみに炊飯以外で使用するときには、内ふたは使わなくて大丈夫です。

長谷園 土鍋 ロールキャベツ

長谷園 かまどさん おでん

炊飯器がなくても気楽に、簡単に。
かまどさんは「火加減いらず、吹きこぼれなし」

「火加減いらず、吹きこぼれなし」って本当に気楽です。慣れは必要ですが、炊き方にコツなし。簡単です。誰でも上手に炊けると言うのは大袈裟ではないのです。これまでは火加減の調整を 1 回もしくは 2 回ほ ど。吹きこぼれそうな予感はするけれども、ちょっと覗くと水分の多さを見ればまだまだの様子。吹きこぼ れる手前に弱火にしようと見張るのに一瞬の隙に吹きこぼれ、ガスコンロと五徳を拭くことになるのです。 長年鍋でお米を炊いてきたので、これはもうつきもの、仕方のないことだと慣れっこでした。かまどさんは 火加減は強火だけ、強火だけなので炊き上がりまであっという間。なのに吹きこぼれないって凄いの一言。 炊飯専用に開発された土鍋ってこういうことなのかと納得です。火加減の調整と吹きこぼれから解放されて はじめて、あれはプチストレスだったと今になり思っています。

なぜ「火加減なし、ふきこぼれなし」なのか

かまどさんの大きな特徴である二重のふた。丸みのある外ふたと、土鍋に密着する内ふたです。炊飯用の土 鍋はいくつもありますが、ふたが 2 つある土鍋は珍しいと思います。二重になっていることで圧力鍋の役割を 果たし、吹きこぼれを防いでくれる仕組みになっています。

底の直火が当たる土色の部分はとても分厚いつくりになっています。蓄熱と耐熱力のある伊賀の土だからできることですが、強火のまま火を当て続けることで、短い時間に熱をしっかり蓄えて、弱火でも中火でもない強火の火力を一気にお米に伝えてくれます。こちらが火加減を調整しなくとも、おいしいご飯が炊き上がるというわけです。

3合炊きは3合炊き
大きさや重さに思うこと

かまどさんは横より縦に少し背の高い、円形に近い形をしています。そういう形なので 3 合炊きでも 5 合分入 ります。入るなら炊けるのではないか、と試しに 5 合炊いてみました。結論、吹きこぼれも火加減の調節もな く、同じように美味しく炊けます。ただやはり容量オーバーなので炊き上がるのに時間がかかり、その分火 の当たる時間が長くなるからなのか、何度か試しましたが焦付きができてしまいました。焦げついてしまう と重曹を入れ沸騰させての落とさなければなりません。綺麗に落ちるまで 3 回もかかったあげく、重曹で綺 麗にしたあとはもう一度目止めをする必要もあり、なかなか大変でした。2 合や 1 合でも試してみましたが、 当たり前なのですが 3 合よりもはやく炊き上がるので、蒸気を見てタイミングよく火を止めることで、焦げ 付かず美味しく炊くことができました。でも 3合炊きは 3合炊き。素直に 3合炊くのが確実だと思います。
かまどさん 3 合用の重さは 4kg ほど、普段、鋳物鍋を使っているので重さには慣れていると思っていますが、土鍋部分を洗う時、持ち上げる時にはやっぱり重いです。お米を入れるともっと重くなりますので、コ ンロにかまどさんを置いてから、お米を入れるようにしています。

長谷園 土鍋 炊飯 たけのこごはん炊き込みご飯 伊賀焼

ちょっとの手間もすぐに慣れます
お手入れの仕方

お手入れの内容に難しいことはありません。最初にお家で使う前にしてほしいことが 1 つ、日々炊く前に確認 してほしいことが 1 つ、使った後にしてほしいことが 1 つ、覚えてしまえば簡単です。何十年と使える道具で す。お手入れをして長く使っていきましょう。最初にお家でしてほしいこと。それは目止めです。目止めとは、お米のでんぷんで鍋底を割れにくくする土 鍋に必要なコーティングのような工程です。8 分目ほどに入れた水もしくはお湯に、だいたいお茶碗一杯分程 度のご飯を入れて、おかゆ状になるまで火をかけていきます。1 時間ほど放置したら、ご飯を取り出し、水で さっと流します。そのまま使うとひび割れしやすくなってしまうので、完全に乾かしてから使ってくださ い。これで準備OKです。次に、日々使う前に確認してほしいこと。ガスコンロに接する底部分は、必ず水滴を拭き取って使ってください。割れの原因になってしまいます。水滴を拭き取った状態であれば問題ありません。ただ先ほどお伝えした通り、乾燥していない状態で使うとひび割れの原因になるため、完全に乾いている状態が一番良いです。

エニシダブラシ ささら かまどさん 土鍋
ご飯を炊いた後は、お米のでんぷん質につけ置きしたくなるかもしれませんが、通常通りに炊けている場合、水につけ置いてふやかすことをしなくとも、 汚れが取れにくいと感じたことはありません。強い焦げ付きではない限り、するっと落ちてくれます。
カビ やすいだけでなく目詰まりもしやすいため、つけ置きには向いていません。すぐに洗うことをおすすめしています。強い焦げ付きの場合はどうするのかというと、7 分目ほどの水に重曹を大匙 1 ~ 2 杯いれて、沸騰させ焦げを浮かせます。しばらく経ったら、木べらで軽く焦げを擦ったり、洗うと焦げが落ちてくれます。落ちないようであれば何回か繰り返してください。ちゃんと綺麗に落ちますよ。重曹を使ったあとは必ず、初めに行った目止めの作業を行なってくださいね。

かまどさん お手入れ 使って洗った後は完全に乾かしてください 乾燥
最後に、使って洗った後は、完全に乾かしてください。中蓋の上に土鍋を重ねるようにすると風通しよく乾かすことができます。土鍋は一番乾かしたい底部分を上にしてください。カビやすいため箱や戸棚にはしまわずに、ラックに置くなどして、風通しの悪い場所への収納はお控えください。

割れたらおしまい?
パーツを買い足せばずっと使えます

長谷園のいいところは使い手目線であること。土鍋をパーツで購入できるって便利だと思いませんか。割れたから捨てる、使わなくなる、ではなく、取り替える必要のあるものは交換し、また手入れをしながら大事に使っていけるものを選択して大事にしていきたいと思っています。

記事で紹介した商品『永谷園かまどさん』は下記の店舗で取り扱っています。